あなたのその姿勢が相手に「悪印象」を与えている理由
「わたしと仕事、どっちが大事?」はなぜ間違いか
「他の人もみんなやってるよ」「主婦には経済のことはわからないんだよ」「UFOが存在しないことを証明せよ」……。
私たちの普段の会話の中には、一見もっともらしく聞こえても、実は論理的でない話、いわば「論理の落とし穴」がたくさんあります。
しかし、それがなぜ間違いなのかをきちんと理解しなければ、悪意のある相手にうまく丸め込まれてしまったり、あなた自身が非論理的な話を連発したりして、「アタマが悪い人」だと言われかねません。
そのために必要なのが、「論理的な思考力」。そして、それをみがくヒントこそが、私たち「弁護士」の思考パターンにあるのです。
なぜ「高慢」と勘違いされるの?
A君は上司とのやり取りに頭を悩ませていた。
というのも、A君がどれほど普通に振る舞っていても、上司たちはA君がどことなく高慢で、鼻持ちならないと感じ、喧嘩腰になってくるからである。
しかも困ったことに、これはある特定の上司との関係だけではない。
年配の上司すべてがA君に反感を抱くようなのである。
A君としては、できるだけ温和に振る舞っているつもりである。
優秀さは誰もが認めるところだが、言葉遣いも、けっして倣慢ではない。
しかし言葉にならない何かが、A君を高慢に見せているようなのだ。
実は、上司たちとの対人関係を悪くしているのは、A君の立ち居振る舞いなのである。
A君は確かに「言葉で」は攻撃する素振りは見せていないのだが、「身体で」反抗を示していたのだ。
A君は姿勢がよすぎるために、上半身を微妙に仰け反らせる傾向があった。
しかもA君は身長が高く、なおさら後ろにふんぞり返っている印象を強めていた。
つまりこの姿勢がわざわいして、相手には威張っている、生意気だ、という印象を与えていたのである。
ビジネス書や面接の心構えを説いた本では、「胸を張り、堂々とした姿勢をとりなさい」とアドバイスされるのが普通だ。
だが、A君はこのアドバイスに忠実に従いすぎた結果、逆にわざわいを招きいれてしまったのである。
胸を張ることが皮肉な結果を招くこともあるのだと覚えておこう。
「胸を張る堂々とした姿勢」は自信や熟意などをあらわす
まさにその通りである。
だが、ビジネスでは下手に出たほうがよいことも多いのだ。
また、特に日本においては、自信は見え隠れするくらいがちょうど良いのである。
そのため、A君のような悩みを持つビジネスマンには、私から次のようなアドバイスをしておこう。
それは、上司の話を聞く時にはわざと膝を折るような姿勢をとり、前かがみになりなさい、ということだ。
そうすれば、座っている上司を立ったまま「見下ろす」よりも、ずっと良い印象を与えることができよう。
前かがみ、中腰、などは従順さを示し、相手に好印象を与えやすい
この法則の正当性をまざまざと示す実験がある。
これは、ヒューストン大学のリーンとミニヤーという心理学者が1993年に行った実験だ。
彼らは本物のレストランを実験会場とし、ウェイターとウェイトレスを集めて次の依頼をした。
すなわち、ウェイター、ウェイトレスのそれぞれ半数には、お客の注文を聞きに行く時に「身をかがめて応対しなさい」と命じ、残りの半数には「いつもどおり立ったままメニューを聞きなさい」と言っておいたのである。
実験結果は、リーンとミニヤーの予想どおりであった。
身をかがめての応対はお客にとって心地よいものらしく、身をかがめて接客をしたほうにより多くのチップを支払った。
しかもこの結果は、ウェイトレスだけでなく、ウエイターにも当てはまった。
男性が身をかがめるのは何となくわざとらしい印象を与えるから、チップには影響がないと思われたが、そんなことはなかったのである。
ウェイター、ウェイトレスが得たチップの平均は次の通りである。
リーンたちは別の二つのレストランでも実験を行ったのだが、まったく同じ結果が得られている。
| 場所 | 身をかがませて対応 | 立ったままの対応 |
| メキシコ店において | 6.40ドル | 5.18ドル |
| 中国料理店において | 3.28ドル | 2.56ドル |
「相手のそばに身をかがめるのは卑屈な印象を与えるのでいやだなぁ」という人がひょっとしたらいるかもしれない。
しかし、ビジネスはビジネスと割りきり、下手に出るべきところは出ることも立派などジネスマンの勤めだ。
将棋でも、自分の持ち駒を一つでも取られたくないと思っていたら、何もできなくなってしまうではないか。
それと同じだ。
自分の身振り、動作というのは、自分ではなかなか気づかない。
A君は、他の人から指摘されるまでは、これからもずっと「高慢に見える」姿勢を続けてゆくであろう。
「言葉に気をつけているのに、なんであんなに怒られるのか?」「なんであんなに嫌われたのか?」という場面に出会ったら、「自分の話した内容」でなく、「自分の身体が語った内容」を探ろう。
そうすれは解決策はきっと見つかるはずだ。
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