データの示し方:「まとめて」示せ(統合法)
心理学辞典
心理学の全領域および関連する隣接諸科学の用語・人名を解説した、心理学辞典。
事項4021項目、人名347項目を五十音順に配列。
各項目における引用・参照文献と主著を著者のアルファベット順に配列した文献リスト、索引(和文事項、欧文事項、和文人名、欧文人名)がある。
マーケティング・リサーチは重要だ。
言うまでもない。
だが、マーケティング・リサーチの結果と自分の願いが食い違ってしまったとしたらどうするか?
つまり、あなたとしてはぜひとも市場に出したい製品なのだが、マーケティング・リサーチの結果があまり芳しくないものだったとしたら?
もちろん、会議でみんなを納得させることができれば、製品として世に送り出すことができる。
ところが、あなたは話しべたでとても参加者を納得させられそうにない。
話しべたでも、リサーチ結果が吉と出てくれればそのデータをもとに押しきることもできたのに…、
しかし、あなたの感性が、あなたの全身が、必ずその製品は売れると信じている。
もし無理に市場に出してさっぱり売れなかったら、責任をとって会社をクビになっても悔いはない。
それほど自分では押したい製品なのだ。
あの売れに売れたクリスチャンディオールの香水プワゾンでさえ、マーケティング・リサーチの結果は惨たんたるものであった。
フランスでは売れても、日本では絶対に売れないとさえ言われた。
マーケティング・リサーチでは「匂いがきつすぎる」「強烈すぎる」とされ「あなたは購買すると思いますか?」と尋ねたところ、女性たちから「買わない」と言われた。
だが、いざ売りに出してみると、オリジナリティがある、といった理由で爆発的に売れたのである。
自分の製品も売れるはずだ。
マーケティング・リサーチの結果が多少まずくても、売れるはずだ。
それならいっそ、企画を通すためにデータを「メイキング」(簡単に言うと、「でっちあげて」しまうこと)して会議にかけようか……。
そんな悪魔のささやきすら聞こえてくる。
しかし、データをメイキングする必要などない。
少なくとも、次のようなデータなら、やり方しだいで参加者を納得させることができるのである。
問:この製品を購買したいと思いますか?(価格は無視して回答してください)
絶対に購買したい 17%
購買したい 13%
購買してもかまわない 12%
よく分からない 23%
あまり購買したくない 22%
購買しない 10%
絶対に購買しない 3%
パッと見た感じ、「買いたいと思っている人が少ない」との印象を受けたのではないだろうか。
また、「あまり購買したくない」と答えた人が結構いるな、との印象も受けたはずである。
したがって、このデータをそのまま見せるのはためらわれるだろう。
それなら、どうするか。
ここで一つののテクニックを使うことにしよう。
それは、「統合法」……自分に有利なように数字をまとめよ……、というテクニックだ。
つまり、「よくわからない」という項目を抜きにして、製品を購買したいと思っているグループと、購買したくないと思っているというグループに統合するのである。
すると、次のようになる。
間:この製品を購買したいと思いますか?
購買したい 42%
購買したくない 35%
どちらともいえない 23%
実は、心理実験からは、次のような原則が導かれているのだ。
相手の興味・関心が薄い場合、強いデータを先に出しなさい。逆に、興味を持ってくれている場合には、最後の最後にそのデータを示しなさい
これは、スボンハーグという心理学者によって明らかにされたことだ。
スボンハーグによると、相手が気乗りしない場合、初めに目の覚めるようなデータを示して興味をこちらに引きつけることが大切だという。
もしこれで動かなければ、最後に持っていってもしょせんは無駄だからである。
逆に、こちらの話に乗り気な場合には、なるべく関連する他のデータで証拠固めをしながら、最後の最後で強烈なデータを見せるほうがインパクトは強くなるというのだ。
この実験結果を活用すれば、資料の順序は、お客の興味しだいで変えていくと効果的ということになる。
優秀なセールスマンは2種類の資料を作るべきで、玄関先で断られそうな場合には強烈なデータが一面に載せてある資料、少しでも話を聞いてくれる素振りのお客には最後の最後でそれが示される資料、の2つを用意すべきなのだ。
とはいえ、2種類の資料を使い分けるのはちょっと……というセールスマンもいよう。
そんな人は、まず「最初に」強烈なデータを示す資料づくりを心がけるべきである。
というのも、「最初インパクト説」を指示する実験結果が多いからである。
たとえば、ペニントンという心理学者がいる。
彼は、大学生を使って模擬的な裁判場面を再現してみた。
具体的には、ハリソンというレイプで起訴された人物に対し、もっとも強い有罪証拠を 「最初に」出した場合と、「最後に」出した場合との影響力を比較したのである。
すると、有罪証拠が「最初に」出された時に、陪審員役の大学生たちは「ハリソンは有罪だ!」と宣告する確率が高まった。
つまり、最初に強いデータを突きつけたほうが、効果的だったのだ。
次の表は、実験に参加した陪審員たちの評決結果である。
| レイプ犯として有罪 | 未遂である | 無罪 | |
| 「最初に」有罪証拠 | 22 | 14 | 12 |
| 「最後に」有罪証拠 | 10 | 23 | 15 |
この結果をペニントンはこう解釈する。
最初に結論を出しておけば、相手はその結論を自分の頭の中で何度も反窮して考えてくれる。
そのぶんだけ、記憶に残りやすいのではないか、と。
セールスマンにとっては身もふたもない言い方だが、ほとんどの消費者はセールスマン、特に訪問販売のセールスマンを嫌っていると考えておいたほうがよい。
だからこそ強烈な資料は「最初に」示すべきなのだ。
会社によっては、セールスマンが携帯する資料が小さな文庫本くらいの厚みになっていいることもある。
たしかに、資料が多いのは良いことなのであるが、興味のないお客に話をわかってもらうためには、目を引くデータを載せたビラ一枚の方が効果的なこともあることを理解しておこう。
会社から渡されたからといって、その資料をそのまま使う必要はない。
自分自身の判断で、短い切り抜きを作ってしまい、それをもとにセールスをしてもいいわけである。
会議で使う資料のなかにも、作った本人の生真面目な性格がそのまま出ている資料がある。
厚みは十分あり、内容も悪くないのだが、「一番言いたいこと」がよくわからず、発表を聞いているうちに、しだいに眠くなるような資料だ。
こうした資料に時間や労力をかけるくらいなら、思い切って、A4用紙一枚くらいに必要なデータだけを載せた紙を配るようにしたほうがよい。
資料は長さではなく、読みやすさ、理解のしやすさ、が重要なのである。
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